中国 北京

《中華人民共和国民法》における技術契約に関する規定

2020年5月28日、《中華人民共和国民法》(以下、民法と略する)が制定され、2021年1月1日から施行される予定である。そのうち、知的財産に関連する内容は主に技術契約に関わり、以下に、《中華人民共和国契約法》(以下、契約法と略する)の関連内容と結び付けて分析する。

 

まず、今回制定された民法では、技術ライセンスの概念が明確に規定され、技術譲渡と同等の地位に位置づけられた。一方、現行の契約法では、技術ライセンスの概念が明確に規定されておらず、技術ライセンスは技術譲渡の下位概念とし、つまりライセンス権利を譲渡し所有権のみを保持する技術譲渡と見なしている。民法におけるこの概念に関する条項としては、第843条、第862条~第864条及び第866条~第874条がある。そのうち、第868条以外は、いずれも主に2つの概念の相違を明確にするものであり、実質内容に関わっていない。

実際に、我が国の民法制度では、所有権と使用権は本質的に異なるため、民法の制定によって技術ライセンスを適切な法的地位に戻したと言うべきであり、技術ライセンスと技術譲渡に関する法的規定の更なる精緻化の基礎を築いた。具体的には、民法第868条で、「前項規定の秘密保持義務や、当事者による別段の合意がない限り、ライセンサーの特許出願は制限されない」との条項が追加された。この条項は「最高人民法院による技術契約の紛争の裁判における法律の適用に関するいくつかの問題に関する解釈」第29条から派生するものである。しかしながら、この第29条が交付された際、技術譲渡と技術ライセンスの区別が特別に区分されていなかったため、この条項は技術譲渡の状況にも適用できると誤認され易い現状があった。ただし、当然解釈とシステム解釈の観点から、この条項は明らかに技術譲渡の場合には適用されないことが分かった。

また、開発を受託する状況下、技術成果の使用権および譲渡権を決定できない場合、現行の契約法では、当事者が使用や譲渡する権利を有することが定められている。民法第861条では、技術成果の使用および譲渡の権利を決定できない場合、同様の技術案が権利付与される前に、当事者は使用や譲渡する権利を有することが更に明確にされた。これによって、関連する技術が特許付与されると、関連する技術は契約の相対性を超え、受託双方の私的権利から特許権者と社会公衆の対世権に変わるため、民法の規定が体系的により合理的になることが分かった。

また、民法第847条で、職務技術成果に対する法定報酬制度が廃止された。もちろん、これは、国家が職務技術成果に対する報酬を奨励しないことを意味するのではなく、会社と職務技術の研究開発者に対して、より多くの自治権を与えるためである。そのため、対応する技術成果が社会の公的技術成果に変換される前に、国家レベルで職務技術成果の報酬に制約を課す必要はなく、一方、社会の公的技術成果に変換された後の報酬については、現行法の報酬規定が維持される。詳細については、特許法第16条、科学技術変革推進法第44条・第45条を参照されたい。

さらに、技術契約の無効に関して、民法では既存の規定における「技術進歩の妨害」なる無効理由が削除された。理由としては、一方では、民法における契約精神を尊重することに基づき無効理由を厳格に制限するとの一般的背景に応えるためであり、他方では、法律の明確化をより良く反映するためである。「技術進歩の妨害」なる無効理由の表現は一般的で広範すぎるため、過去の司法実務で論争を招くことが多く、多くの場合にポケット条項として悪用されたこともあった。

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