4月21日、最高人民法院は全国法院「2024年度知的財産権法律適用状況報告書(抜粋)」を公表した。報告では、2024年に全国法院が審決した知的財産権事件から43件の法律適用状況を選出した。
その中で、北京フェアスカイ特許法律事務所が代理した「 医薬品特許リンケージ紛争における医薬品技術方案の変更の取扱い」案件も選ばれた。
以下の裁判要旨部分は、最高人民法院が公表した年度報告(抜粋)から引用したものである。
「事例6. 医薬品特許リンケージ紛争における医薬品技術方案の変更の取扱い」
案号(2023)京73民初855号
基本情報
本件は固体製剤に関し、後発医薬品の発売承認過程において、クライアントは後発医薬品の技術的ソリューションを変更した。タイムリーに医薬品の承認を獲得し、その後の発売時に特許侵害リスクを軽減するために、クライアントは『登録出願中の医薬品に関する特許紛争の民事事件における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院の規定』第4条の規定に基づいて、自発的に本訴訟を提起した。
一審法院は、実質審理を行って当該後発医薬品の技術的思想の根拠を確定すべきか否か、また、当該後発医薬品の変更された技術的思想が本件特許の関連請求項の保護範囲に含まれるか否かについて詳細に議論した。一審法院は、医薬品特許リンケージ制度における「登録申請された医薬品」の範囲、医薬品特許リンケージ制度と医薬品の承認・審査手続きとの関係、重複訴訟の成立の有無の3つの側面から本件審理の根拠を判断した。同時に、後発医薬品の技術案の技術的特徴が本件特許の請求項の技術的特徴と異なることから、「基本的に同一の手段」を構成しておらず、両者は均等ではないと判断し、その結果、当該後発医薬品は本件特許の関連請求項の保護範囲に含まれないと結論づけた。
裁判の要点
医薬品特許リンケージ紛争案件において、人民法院は、医薬品審査承認部門が医薬品の販売承認の可否を審査する際に用いる技術的解決法を基準として、医薬品が特許権保護範囲に含まれるか否かを判断するべきである。医薬品の上市申請者は、医薬品が特許権保護範囲に含まれるか否かの判定に影響を及ぼす可能性のある技術的解決方法の変更について、迅速かつ的確に人民法院に説明しなければならず、さもなければ、法に基づき不利な結果を負わなければならない。
典型的な意義
本件は、中国において医薬品特許リンケージ制度が実施されて以来、医薬品特許リンケージ制度の関連規定に基づいて、製薬企業がその特許が特許請求範囲の保護範囲に属さないことを確認するために提起した初めての訴訟案件であるとされている。
本件を通じて、医薬品特許リンケージ制度で審査される後発医薬品の技術的解決案は、後発医薬品の登録申請時の技術的解決策に限定されず、中国国家薬品監督管理局が承認した後発医薬品の変更後の技術解決策も含まれることが分かる。このことは、中国における医薬品特許リンケージ制度の積極的な発展を促進する上で必ずや有益となるであろう。
原文URL:https://mp.weixin.qq.com/s/dqxaJDSKEmQpXJOtAToLfA
出所:北京フェアスカイ特許法律事務所